院長ブログ Vol.18 「代役」
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「代役」
私が、まだ小学生1年か2年ぐらいの頃父の診療所に、タカラヅカ歌劇の
有名な先生がよく治療に来られていました。
当時は、その先生の紹介でタカラジェンヌも結構たくさん治療に来られていたようです。
父も母も、その先生とは懇意にしていて、よく無料の招待券をいただいていたようです。
そんな関係もあり母に連れられ、何度かタカラヅカを見に行ったことがあります。
その頃は、ワンパク坊主ではなかったけど、ガサツで落ち着きがなく
母からよく叱られた記憶が残っています。
私は、虫取り、カエル取りや、探検ごっこ、探偵ごっこなど、外で
遊ぶ方が好きだったので、1時間も2時間もジッと座っておとなしく
観劇するのは、牢獄に押し込められた囚人のような心地だったことを覚えています。
私にとって最後のタカラヅカになったときのお話をしたいと思います。
宝塚の駅を降り、劇場ゆく道すがら並木の枝でカミキリ虫を見つけ、捕まえて、喜んで
ポケットに隠し持っていたのですが、劇場に入る前に母に見つかり、
「こんな変な虫、持って入ったらみんなビックリしはるやないの、はよ、捨てといで」と
強制的にカミキリ虫を開放させられました。
さて、劇の内容は忘れましたが、確か「回転木馬』とかいうタイトルのお涙ちょうだいの
悲しい物語だったと思います。幕が開き、第一幕がはじまりました。
私はすぐに退屈になり、足をブラブラさせていると
母 「がさがさせんと、おとなしく見ときなさい」
私 「おしっこ」
母 「もうちょっと我慢し、男の子やろ」
こんな時だけ、どういうわけ男の子というだけで辛い思いをした記憶が残っている
私 「もう、もれる」
母 「もう5分したら休憩や、我慢したらソフトクリーム買ったげよ」
さて、目先のソフトクリームにつられ、何とかお漏らしの危機を乗り切り
ご褒美のソフトクリームにありつくことができ、第二幕が始まりました。
二幕の始まりは、愛し合う男女の悲しい別れのシーンで、確か主役の男役は、
自分の愛馬を連れていました。
なんとその馬が本当の馬で、今まで本当の馬などお目にかかったことがない私は
私 「うわ~!ほんまもんの馬やかっこえ~」と歓声をあげてしまいました
母 「静かにしなさい、静かにせえへんかったら、口ひねるよ」と小声で脅かされつつ
めげずに、がさがさしていたようです。
物語は静かに進んでいき、運命に翻弄され別れなければならない男女の悲しみは
物悲しい音楽とともにクライマックスへと進んでいきました。
別れを惜しみ、泣きながら抱き合う二人の傍らに馬が繋ぎ止められていました。
私は、二人の別れより馬のほうに興味があったので、ずっと馬ばかり観察していました。
愛し合う二人の傍らの馬のお尻から、大きなお団子のような茶色の
かたまりがブツブツ、ボタボタと落ちてくるではありませんか!
おもわず私は「あっ、馬、ウンコ、ウンコしてる、馬もウンコ我慢でけへん
かったんや~」と、今度は、周りの人が気づくぐらいの歓声をあげてしまいました。
私の声が、引き金になったかどうかは定かではありませんが、観客すべての注目が、
主役のタカラジェンヌさんたちから、馬に移り場内は笑いの渦に飲み込まれました。
二人は、何が起こったのかとっさに理解できず狐につままれたような感じで、キョロキョロし、
セリフもシドロモドロ。
今から考えると、役者さんたちは本当に気の毒だったと感じますが、まるでタカラヅカ歌劇が
タカラヅカ喜劇へと変わってしまったようでした。
暫くおいて、急いで幕が引かれ臨時休憩のアナウンスがありました。
20分、30分おいて再び、第二幕が開いて物語が始まりました。
役者さんは同じ人だったと思いますが、馬がさきほどの本物ではなく、ひとりが頭の部分で
もう一人がおしりの部分をうけもち二人の人間で一頭の馬の着ぐるみを着た、ぜんぜん
馬らしくない代役が出てきました。
私 「なんや、ニセもんの馬やん、かっこわる~」
母 「ええ加減にしいや、あなたなんかもう絶対、ここに連れてけーへんからな」と
小声で叱られつつ、その代役を見て本当にがっかりしたことを今でも、どういうわけか
鮮やかに記憶に残っています。
そして母の言葉どおりこの一件いらい、タカラヅカの劇場内に足を踏み入れることは
なくなりました。
(タカラジェンヌをはじめタカラヅカ関係者、そしてタカラヅカファンの皆様タカラヅカ歌劇は、
日本でトップの劇団だと思っています、この内容は決してタカラヅカを誹謗中傷する目的では
ありません。品位を落とす内容でケシカラヌと感じられるかたがございましたら、
平にお詫び申し上げます。すいません。)
さて、私たちの仕事は、補綴治療といって(クラウン、ブリッジなどのかぶせもの、入れ歯、
インプラントなど)人工物を入れる治療が 大きなウェートを占めております。
いわば、患者さんが失われた歯や歯質の代役を提供する仕事です。
この代役が、患者さんをがっかりさせず、本物の歯のように活躍し、患者さんが本当の歯
のように喜んでいただけるよう日々、スタッフとともに精進していきたいと考えております。
医療法人 添田歯科診療所 院長 添田義博