添田院長ブログ Vol.82 「水仙」
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「水仙 Narcissus」
毎年2月の終わりになると、庭に白い美しい水仙がたくさん咲きます。
妻の話では水仙を植えた覚えはなく、以前住んでいた人が植えた球根が残っていて
美しい水仙ですが実は有毒植物で、特に茎の部分に
有毒成分(リコリンとシュウ酸カルシウム)が
多く含まれているそうです。
致死量は10gで、食中毒症状および接触性
皮膚炎症状を起こします。
葉がニラとよく似ている為に時々誤って食べ、食中毒症状を引き起こす
という事件も報告されています
㊟ どんなに、ろくでもなくて粗大ゴミとして出してしまいたいような
ダンナや恋人でも、絶対にレバニラ炒めなどに、水仙の葉を混ぜないで下さい。
そんな事をすると、警察のお世話になる事になりますから。
冗談はさておき、水仙の学名「Narcissus(ナーシサス)」は
ギリシャ神話に登場する青年、ナルキッソスの物語に由来しています。
ナルキッソスの姿を見ると、どんな娘も心が奪われてしまうぐらいの
超イケメンで美しい青年だったそうです。
そんなわけで、森の中で一番美しいニンフ(妖精)のエコー(日本語でこだまですね)も
ナルキッソスを見て、たなるきちまち彼の虜になってしまいました。
一方のナルキッソスは、どんな美しい女性が現れても全く無関心でした。
エコーがしつこく彼を追いかけても、自分に振り向かせる事はできませんでした。
振り向いてくれないナルキッソスの事ばかりに夢中になり、
主人の女神ヘラがエコーに話しかけても彼の事ばかりしゃべり、
ろくに返事をしなかった為、ヘラの怒りをかってしまいました。
「余計な事ばかりベラベラ喋るんじゃない!おまえは人に言われた事だけを
返事すればいい!!これからは余計なお喋りができないよう、相手の言葉尻しか
言えないようにしてやる」
それからというもの、エコーは自由に言葉を喋れなくなってしまいました。
ある日エコーは、林の中を歩いてくるナルキッソスを見つけ木の陰に隠れていると
ナルキッソス:「誰かそこにいます?」
エコー: 「います!」
ナルキッソス:「誰だい?出ておいで」
エコー: 「おいで!」
と言いながら木の陰から走り出ました。
ナルキッソス:「なあんだ、お前か。
お前なんかとつき合う位なら死んだ方がましだ」
エコー: 「死んだ方がましだ」
エコーは、そう言って洞穴に身を隠しショックと悲しみのあまりやせ細り、
とうとう声だけになってしまいました。
こんな調子でナルキッソスは、優しい言葉をかけたり相手の気持ちを
考えたりする事などまったくしませんでした。
また人を愛する事などもなく、ただ相手の気持ちをメチャメチャにするばかりでした。
そういう事が続き彼の行いはついに、復讐の女神ネメシスの怒りに触れました。
女神は「人を愛する事のできないものは、自分だけを愛していればよい!」
そう言って、ナルキッソスに呪いをかけました。
水を飲もうとして泉の畔にかがみこんだ
ナルキッソスは、水面に写った自分の姿を見て、
その虜になり自分自身を愛してしまい、
その場から離れられなくなりました。
「ああ!愛する事がこれ程までに苦しい事
なのかが、初めてわかった。
こんなにも胸の中が燃える様なのに、水の中の美しい人は
つかまえる事ができない。でもあきらめて、この場から立ち去る事など
できない。死だけがこの苦しみから解放してくれるのだろう」
そう言ってナルキッソスは、そこに倒れて動けなくなり、
心優しいニンフ達は、彼を手厚く葬ってあげようと
泉の畔に集まりましたが、ナルキッソスが倒れた
泉の畔には、その亡骸は無く、代わりに見たこと
のない美しい花が咲いていました。
そしてこの花をナルキッソスと名付けたそうです。
妻が自分の顔をうっとりたした感じで見つめています。
妻: 「う~ん、前髪をたらした方がカワイイかな?
それとも上げた方がいいかな?どう?」
私: 「どっちでもいいじゃん」
(早くしないと、電車に乗り遅れてしまうのに。。。)
妻の視線が一瞬、鋭く私を突き刺した。
目は逆三角形になり顔が般若の様に…(「ブログVol.33「般若」を読むべし)
妻:「どっちでもいい?」
私:「いやいや。どっちもいい、似合うよっ!て言ったんです」
妻:「そう。う~ん、どうしようかな~」
そう言って再び鏡に写る自分を見つめ、うっとりしている様です。
私はそんな妻の姿を見て、『そんな鏡にへばりついていると、水仙になってしまうぞ』と
思ってしまうのでありました。
自分に惚れるとかいて、自惚(うぬぼ)れと言います。
自惚れの強い自己陶酔者をナルシストと言いますが、自分の知識や技術に自己満足し
ナルシストにならない様に、スタッフ共々患者さんの為に日々ガンバっていきたいと考えます。
医療法人 添田歯科診療所 院長 添田義博
※画像:カラヴァッジョ《ナルキッソス》 (ローマ・バルベリーニ美術館所蔵)
※画像:ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《エコーとナルキッソス》ウォーカー美術館所蔵(リヴァプール、イギリス)
※画像:ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《ナルキッソス》個人蔵