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PostHeaderIcon 院長ブログ Vol. 57 「三途の川」

 
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「三途の川」

もう二十年以上前になりますが、父が脳溢血(小脳出血)で倒れました。

緊急入院し、 二~三日予断を許さない状態になり「最悪の場合、

死も覚悟して下さい。そして、もし命が助かっても身体に麻痺など、

重い障害が残って、今後、仕事はできない可能性が高い」ということを

担当の医師に、宣告されたことを今でも、はっきり覚えています。

父は昔から強運の持ち主です。

大先生(父)

戦争中、海軍の志願兵として、呉の軍港にいたのですが

辞令で横須賀に移動したとたん、呉の軍港が

アメリカ軍の爆撃を受けて壊滅状態になったり

戦後、肺結核を患ったときに、運良く、結核の特効薬

ストレプトマイシンが安価で手に入るようになり

劇的に結核から回復したり、いろいろ窮地を乗り越えて、生き抜いてきたそうです。

倒れた時も、出血がほんの少しでも多ければ、命はなかったといわれています。

奇跡的にカムバックをはたし、1週間するかしない内に、歩かないと身体が鈍るといって、

病院の中を歩き回り、医師に言われたような、後遺症もまったく見られず、

三ヶ月ぐらいで仕事に復帰しました。

話が長くなりましたが、その父が倒れる半年ぐらい前に、とても不吉な夢をみたそうです。

その夢というのが・・・・・

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三途の川でたくさんの亡者が小高い丘を登っていて、父も亡者の列について、

その丘を登っていったそうです。

丘を登ると、大きな川が流れていて、川の畔で、亡者達が川を渡る順番を待っていました。

父も、その順番を待っていたそうですが、丘の下から、男が息せき切って走ってきて

父の後ろまでやってきました。

その男は、父の知りあいだったようで、何やら、とても急いでいるようなので、

先に渡る権利を譲ってあげたそうです。そして、男は急いで川を渡っていきました。

川の半ばを過ぎたとき、空から蔦でできた鳥かごのようなものが降りてきて、父はその中に

閉じ込められ、元着た川の畔へ戻されてしまったそうです。

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そこで、目が覚めたそうですが、あまりにも

気持ちが悪い夢だったので、鮮明に覚えているとのことでした。

夢には何か、必ず意味があり、それは、未来に起こることの

予言のようなものであることが多いといいます。

実際、夢で川を先に渡る権利を譲った知りあいの男性は、

父が倒れる二、三ヶ月前に、急病で亡くなりました。

父は、この川は三途の川で、川の途中で引き戻されたことは

奇跡的に死の淵から蘇ることを意味していたと、強く信じています。

さて、三途の川は、皆さんご存知のようにこの世とあの世を隔てる大きな川です。

三途というのは、三つの道を意味し、この世からあの世に渡るのに

三通りの道があるそうです。三途の川をストーリーで説明したいと思います。

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たくさんの亡者たちが、うすら寒く、霧が立ちこめる

三途の川

三途の川の畔に列をなしている。

川の畔には、衣領樹(えりょうじゅ)といわれる

大きな木が立っていて

木の下には、奪衣婆(だつえば)

木の上には、懸衣翁(けんえおう)がいて、

亡者がやってくるのを待ち構えている。

奪衣婆は字のごとく木の下にやって来た、

亡者の衣を奪い取り、懸衣翁は、奪衣婆が

奪い取った服を衣領樹の枝に懸ける。

それが彼らの役目である。

衣領樹の下に、スーツをきた貫禄のある

初老の男性がやって来た。

(この男は、死んでもう名前がないので亡者Aとしておく)

奪衣婆「おい、おまえ、着ている服を脱げ!」

亡者A「私が服を、失礼な、君、この議員バッジが見えんかね、私は、運輸大臣、

     大蔵大臣、そして内閣官房長官まで勤めたんじゃぞ、早くそこを通せ!」

奪衣婆「バカヤロー!、ここではホームレスも大臣も関係ない、ツベコベいわず、早く、服を脱げ

     脱がぬのなら、剥ぎ取ってやるぞ」

亡者Aは、奪衣婆の怒りの形相と剣幕に逃げ出そうとしたが、すぐに捕まり、

服を剥ぎ取られた。奪衣婆は、剥ぎ取った服を木の上にいる、懸衣翁に放り投げた。

奪衣婆坐像                                牛久市指定文化財

奪衣婆「爺!こいつの服を、枝に懸けてくんろ」

懸衣翁「あいや~」

不思議なことに、懸衣翁が服を懸けた木の枝は

その服の重さで地面につかんばかりにしなった。

衣領樹は、亡者の生前の罪業に反応し、

亡者の服を枝にかけると、罪業が多い程、

枝がしなり地面につきそうになるのである。

懸衣翁「そいつは、官房長官か何だか知らんが、生前は、汚職で私腹を肥やしたり、

     国の税金であちこち海外旅行をしたり、秘書を自殺に追い込んだり、悪行の数々を

     やってきて知らぬが仏と全て人の責任にしてのうのうと生きてきよったぞ」

奪衣婆「やはりの~、お前は三途の川の強深瀬(川の深いところ)いきじゃ!

     川を渡れば、閻魔様がお前の行いの裁きを待たれておるぞ、ふぇ、ふぇ、ふぇ」

そう言うと、どこからともなく鬼が現れ亡者を、強深瀬へ連れてゆき、蹴落とした。

亡者A「うわ~、溺れる、君たち金ならいくらでもやる、助けてくれ!ゴボッ、ゴボッ」

強深瀬は、亡者たちの足がつかない深さで

流れが急で、しかも、絶え間なく流木や大きな岩が、転がってきて亡者たちを襲うのである。

また、川底には猛毒をもつ水蛇(大蛇ともいわれる)がいて、溺れて川底に沈んできた

亡者たちに、容赦なく噛みつくのである。

亡者たちは、幾日も耐えがたい苦しみに苛まされながら、あの世の畔にたどりつくのである。

さて、次に一流ブランドの服で着飾った女性が衣領樹の下にやって来た。

(女は死んで名前がないので亡者Bとしておく)

奪衣婆「おい女、着ている服を脱げ」

亡者B「え?、何ですって、これ、シャネルのオートクチュールなのよ!

    脱ぐなんてできませんわ」

奪衣婆「ばかやろう!お前らの着ている服は皆同じじゃ、脱がぬのなら、

     ワシが剥ぎ取ってやる」

ビリビリ、バリバリ、ビリビリ、バリ

懸衣翁                    (土佐光信画)

亡者B「あれ~。私のシャネルが、堪忍してくだい」

奪衣婆は、亡者から剥ぎ取った服を

懸衣翁へ放りなげながら言った

「爺!こいつのはどうじゃ!」

懸衣翁 「あいや! 」

爺が枝に、亡者の服を懸けると枝が少しなった

懸衣翁 「ふ~ん、こやつは、ちょいワル女じゃ

ダンナのへそくりをブランド品などにこっそり使い込んだり、ダンナに

ろくなものも食わせず、召使いのようにこき使ったりしたが、それほどの悪人でもなさそうじゃ」

奪衣婆「ほんじゃ、おまえは浅水河じゃ」

亡者B「私のシャネル!、返して~!、ああ~!、くしゅん」

亡者は、鬼に導かれ浅水河へ。

浅水河は、生前の罪業が比較的軽い亡者が渡るとされる道で

川の流れも急ではなく、川の深さは膝ぐらいで

時々流れに足をとられそうになるが、それほどの苦もなく、渡ることができるのである。

また次に、汚い格好をしたよぼよぼの爺さんが足を引き摺りながらやってきた。

(爺さんは、死んで名前がないので亡者Cとしておく)

奪衣婆「そこのじいさん、服を脱ぎな」

亡者C「へえ、すいまへん汚い服で、ご迷惑かけますだ」

奪衣婆「爺、この服を枝に懸けてくんろ」

懸衣翁 「あいや! 」

爺が枝に、亡者の服を懸けても枝はしならずそのままである

懸衣翁「この爺さんは、まじめに働いてためた金を人に騙されて失い、

     ホームレスに身を落としたが、ホームレスになっても、小銭をためて

     身体に障害がある者の面倒を一所懸命看ておったぞ」

奪衣婆「見上げた奴じゃ、おまえは、有橋渡(うきょうと)をいくがよい、

     きっと、あの世では良いことがまっているぞよ」

亡者C「ありがとうごぜぇます」

有橋渡は、善人が通る道(金銀財宝で飾られた橋ともいわれる)で楽に

あの世に渡れるとされる。

昔、棺桶に、死者の三途の川の渡り賃(冥銭ともいわれる)として六文銭を

入れる風習があった。

この渡り賃により、死者は楽に三途の川を楽に渡ることができるという言い伝えがあり

現在でも、紙などで六文銭に模したものを棺に入れる風習があるところもある。

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さて、この三途の川のストーリは仏典や、民間伝承などを参考に、私が創作したものです。

実際は亡者たちは白い同じ死に装束をきているようです。

余談ですが、三途の川を渡らず、あの世にいく方法が二つあるそうです。

一つは、お釈迦様や、悟りを開いた聖人で、死後、直接、極楽浄土に行くと云われています。

もう一つは、極悪人で、死後、直接、地獄に落ちると云われています。

私自身、三途の川を見たことも、また、渡ったこともありません。

また、あるかどうかもわかりません。

もし、あるとすれば、スタッフとともに、患者さんに喜ばれる治療をして

死んだ後は、三途の川を橋を通って渡りたいものです。

    

医療法人 添田歯科診療所 院長 添田義博

 

※参考画像⇒懸衣翁 Wikipedea

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