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Archive for 6月, 2010

PostHeaderIcon 院長ブログ Vol.22 「タヌキ」

 

———————————————————- 院長ブログ

「タヌキ」

   

もう8年ぐらい前の話です。

「あなた、2、3日に一回、猫が庭に忍び込んできて、 みかんの木の下あたりに、

たくさんフンをするのよ、本当にどこの猫かな?勝手に人の庭に侵入してきて、

夜な夜なフンをテンコ盛りしていく失礼なヤツを何とかできない?

まだ、この前のフンが残ってるから一度見てきて、そのフンの多さびっくりするわよ」

当時、家庭菜園に凝っていた妻から日曜日に家で、ゴロゴロしている私にお達しがあった。

 「はっ、仰せの通り」と、さっそく家の裏庭のみかんの木の下へ。 

すると、そこには干からびた黒豆のような大きさの奇妙なフンが

数珠繋ぎになっていて、大きな饅頭のように盛り上がっていました。 

『猫? 猫のフン??』昔、猫を飼っていたので猫のフンには馴染みがあるけど

どうやら猫のフンではないみたいです。  

「スゴい量のフンだけど、たぶん猫のフンと違うと思うよ」と妻に言うと

「じゃ犬?、あんなスゴいフンをする犬だったら相当大きな犬 だろうし、でも庭のフェンスに

そんな犬の入れる隙間なんかないしね?ひょっとして、あなた? ・・・」と妻。 

「そんなバカな、ネズミ?イタチ??近所のオッチャンか???」

 結局、何のフンか分からないまま妻と、ああだ、こうだと言っていると

タイミングよく年に2、3回庭の手入れにくる庭師のおじさんが来て

フンを見るなり 「これは、タヌキのフンやな、タヌキのタメフンやで」と言った。

おじさんの予想外の答えに 私と妻はハモって「えっ!タヌキ!」と

驚きの声をあげました。

おじさんは 「庭に、枇杷や柿や、みかんの木があるから 、

タヌキはそれを目当てに、お宅の庭に忍び込んでくるんや、

でも、こんな住宅街にどこから来よるんやろな?」と不思議そうに

首をかしげていました。

『タヌキ、タヌキが庭に』今まで野生のタヌキなど見たことのない私たちは

半信半疑で、おじさんの話を聞いていました。

その日から、私は、我が家に侵入してくる珍客をひと目見ようと居間から、

見えるところに皿に残飯を入れて夜な夜な、カーテンの陰から見張っていたのですが、

タヌキは警戒心が強いようで、相変わらずみかんの木の下にフンがあるので、

庭に忍び込んできているようなのですが、なかなか姿を見せてくれませんでした。

毎日のように、1時間も2時間も昆虫のように、居間のカーテンにへばり付いている私を見て

「あなたも暇人ね、タヌキは人を化かすと云うけど、庭師のタヌキおやじ

(庭師のおじさんはタヌキよく似ています)に化かされたんじゃない」などと

妻からの嘲りの言葉を浴びせられましたが

それにもめげず、カーテンにへばり付き続け、確か6日目のことです。

いつものようにカーテンの陰から、庭を覗いていると

夜の9時ぐらいでしたか、何やら、猫よりヒトマワリ大きい、

黒い生き物が茂みの中から現れ、ぬき足差し足で、残飯の入った

皿に近づいてきました。

よくみると、あの目のまわりが黒い、づんぐりむっくりした、

こげ茶色 のタヌキです。

タヌキは、素早く残飯をくわえ、あっという間に

茂みのなかに姿を消しました。

さて、あくる日、私の後ろで妻と子供もカーテンに虫のようへばり付き

タヌキが現れるのを、今か、今かと待っていました。

すると昨日と同じ時間ぐらいに、タヌキが茂みの中から姿を現しました。

本物のタヌキのお出ましに、妻も子供も驚いていましたが、

なんと、そのタヌキに続いて少し小ぶりのタヌキ、タヌキの嫁さん?も

後から姿を現したではありませんか、こちらが夫婦同伴なので、あちらも

礼儀正しく、夫婦同伴で訪問してきたのかもしれません。

毎日、残飯や、古くなった食べ物を与えているうちに

タヌキの夫婦もだんだん慣れてきて、残飯を庭でゆっくり食べ

我々が隠れている窓にも近づくようになりました。

そして、ある晩、タヌキの夫婦の後ろに、2匹、チョロチョロ

子タヌキたちがついてくるではありませんか!

これで、みかんの木の下のフンの多さの理由が

分かりました。

彼らは、家族で我が家に遊びにきていたのです。

    

一ヶ月もするとタヌキの家族は、すっかり慣れ

私たちがカーテンを開けて、見ていても平気で庭を歩き回ったり

木に登ったりし、4匹のタヌキが庭で遊び、満月でもでていれば、

ポンポコポンのポンとタヌキ囃でも聞こえてきそうなにぎやかさです。

子タヌキにいたっては親ダヌキより度胸があって、

ウチの子供が、差し出す食べ物に釣られ、

居間の中まで入って来るまでになりました。

毎日、欠かさず餌をあげていたのですが

一度、家族で外出する用事があり、夜遅くなり

タヌキたちは、ご馳走を期待していたようでしたが

あいにく、その時は、残りものなどタヌキの餌になるような

ものがなく、タヌキたちはガッカリしたような顔で、トボトボ

帰っていったことが、今でも印象に残っています。

タヌキが訪問し始めて、数カ月経ったころ

隣の空き地に、家が建つことになり工事が始まりました。

工事の人達が、「何か動物の大きな巣穴みたいなものがあり、

動物の足跡がいっぱい残っていた」と話をしていたのを妻が耳にし

タヌキたちが、雑草の生い茂った隣の空き地に、巣穴を作って住んで

いたことが分かりました。隣の工事が始まって以来、タヌキたちは

どこに行ったのか、姿を見せなくなりました。

                          

私の診療所には 父が院長をしていたころからの

30年以上勤務してくれている古狸、いや古参の女性スタッフがいます。

彼女は、昔からの患者さんから、親しみを込めて 古狸、あ、間違った、

主(ぬし)とか大番頭さんなどと呼ばれ、たくさんファンがいるようです。

彼女のファンが多いのもザックバランな性格と、その面倒見のよさであり

カウンセリングで患者さんの口の中の悩みを聞くのはもちろん

口以外のでも、肌の悩みがある人には皮膚科を紹介したり

この近くで美味しい料理屋さんを探している人には、

 なんば界隈の美味しい日本料理屋紹介したり

運勢で悩んでいる人には、よく当たる?占いのおばさんを紹介したり

犬好きの患者さんには、犬の美容室探しを手伝ったり

婚活中の子供のことで頭を悩ませている患者さんには

子供の見合いの相手さがし(そんなときは、年ごろのスタッフに、

「あんたどうや見合いしてみるか」と釣書片手にとにじり寄っています)

を手伝ったり、よろず相談なんでもござれと引っ張り狸の

あ、また、間違った、引っ張りダコの大人気です。

スタッフの間でも、彼女の存在感はエキストラエキストララージで

快刀乱麻を断つごとく、ものごとを気持ちよく捌いていきます。

歯科材料の業者さんや広告会社との値段交渉、

診療所の忘年会等セレモニー取り仕切り、

髪の毛の少なさを気にしている男性スタッフの毛生え薬の調達

『 (効果は??編集長どうですか?)「えっっ!?効果は・・・ノーコメントです」 』

「いく」、「いかない」と花占いのように変わる気まぐれな父の飛行機の手配、

(父は年に5回、6回と何かに託けてハワイ住む姉のところへいきます)

 患者さんから、頂いたお菓子などの仕分け、

しつこい不動産の押し売りの断りまで

これまた、なんでもござれと、八面六臂の大活躍で、

私の診療所の看板狸で、いや、看板古娘で

いつもその働きぶりには感心させられます。

その彼女先日、カウンセリングに来られた患者さんと、歯の治療の相談にはじまり

世間話、そしてよろず人生相談と一時間ぐらい話し込み

すっかり意気投合したようで

患者さんも何だかわからないけど彼女の魔力、いや違った、魅力で、

すべて治療はお任せという雰囲気になったようで

彼女は、カルテを持って

「先生、この患者さんは治療費はいくらかかっても良いから最高の治療法を

希望されていますので、お願いしますよ」と

カウンセリングルームから飛び出してきました。

患者さんのレントゲン写真、そして口の状態を見せていただいた後、

治療の選択肢を彼女に説明すると、計算機片手にカチカチ、カチカチ

「下は両側とも奥歯がないから、そこはインプラント4本

上の前歯は、昔治療してブリッジに隙間ができてきて虫歯になっている

から 全部はずして治療し、ジルコニアのブリッジを、

上の奥歯は・・・全部で治療費○○○万なり」

と、頷きながら、再び、治療法と費用の説明をしにカウンセリングルームへ。

そして、ほどなく

「全て治療して○△○万の治療の話になりましたで、来週のはじめに

予約も取っときましたで、頼んまっせ~」と得意満面でポンポンとタヌキが

腹鼓をたたくように、おなかをたたきながら私に話をしにきました。

それから、数日後、「ああ~ショック! あの、この前の社長さんの奥さん 、

ご主人の体調が悪くて入院されることになり、自分の治療どころじゃなくなり

予約のキャンセルの電話があって・・・せっかく、ガンバって決めた

○△○万の仕事が、あ~ショック!」

私が「まあ、そういうこともあるさ、しかたがないよ」と慰めても

「あ~ショック!もし、治療に来られていたら・・・○△○万が」と

未練断ちがたい様子で、ため息ばかりついているので

『それって、捕らぬタヌキの皮算用やで』と言おうとして見た

彼女の顔が、あのとき トボトボ帰っていったタヌキの顔とそっくりに見えた。

医療法人 添田歯科診療所 院長 添田義博

 

※タヌキ囃子:狸囃子(たぬきばやし)は、日本全国に伝わる音の怪異。深夜になると

         どこからともなく、笛や太鼓などの囃子の音が聞こえてくるというもの。

※八面六臂:八つの顔と六つの腕をもつ仏像で、このことから多才でひとり何人分もの活躍を

        することにも使われる

※ためフン:タヌキは家族(群れ)で行動することが多く場所をきめてフンをする習性がり、

        そのタヌキのフンをタメフンというそうです。