院長ブログ Vol.20 「IN ONE’S MOUTH」
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「IN ONE’S MOUTH」
2005年に公開された、キャメロン・ディアズさん主演の「IN HER SHOES」
という映画があります。5年近く前に見た映画なので詳細は忘れましたが、
ストーリは内面にコンプレックスを持っている妹と外見にコンプレックスを持っている
姉の心のすれ違いと葛藤(かっとう)、そしてそれを通じた主人公の
女性の自分探しを描いたものだったと思います。
英和辞書で調べるとSHOEのところに
「IN A ONE‘S SHOES」
「相手の(苦しい)立場になって」 と訳がありました。
ところで、仕事柄、毎日のように患者さんの口の中に手を入れて
いる私は本当に患者さんの苦しい気持ち(歯の痛みなど)が分かっているかといわれると
正直、反省をしないといけない時もあります。
私ごとですが、10歳ぐらいまで堺の方に住んでいました。
隣家が、駄菓子屋さんで、両親が忙しく家にいないことが多いのをいいことに
こずかいをもらうとすぐ隣に走っていき、飴、ガム、チョコレート
アイスキャンデー等など、好き放題食べていました。
食べてもろくろく歯も磨かず、近所の子供と探検ごっこや、戦争ごっこなどと
遊び呆けていたので、因果応報、私の口の中はみるみる虫歯に侵されていきました。
舌で触って分かるぐらいの虫歯の穴が奥歯にできたのですが
痛みがないからと放置しておくと、とうとうある日突然、痛みが襲ってきました。
「歯医者の息子が、虫歯がいっぱいでみっともないはなしやな」と言われながら
母に、夜遅く父の診療所へ連れて行かれ、歯の治療を受ける羽目になりました。
ウィーン、ウィーンとエアータービンの音が耳元に大きく響きだし
歯に何ともいえない不快な振動が伝わりはじめ、恐怖と不快感に耐えきれず
体をゆすりました。
私 「ちょっときりきりする」
父 「ちょっとぐらい痛いのがまんせな治療でけへんじゃん」
私 「顎がしんどい」
父 「口を大きく開けへんかったら、危ない」
私 「ちょっといたい!」
父 「もうちょっとで終わるからちょっとぐらい我慢し、がまんせんかったら痛いの治れへんで」
治療は、2、30分ぐらいで終わったのですが、当時の私にとって
終わりのないほどの永い時間に思え、父も恐ろしい地獄で亡者たちに
拷問を科す鬼のように思えました
今思えば、当時、父は朝の6時ぐらいから夜9時ぐらいまで働き、日曜も技工の仕事などで
診療所で仕事をすることがよくあり、かなり疲れていて、
自分の子供に優しく、丁寧に、子供の気持ちになって治療することを求めること自体
酷なことだと感じます。
何れにしても当時は、本当に辛い、苦しい体験でしたが、今では
患者さんの苦しい立場を理解する、良い体験だったと感じています。
患者さんが、治療中痛みを訴えられたり、不快な思いをされたりした時
自分の体験をオーバーラップさせ、できる限り患者さんの立場で
「IN ONE‘S SOHES」そして「IN ONE’S MOUTH」で
考え、治療するように心がけています。
医療法人 添田歯科診療所 院長 添田義博